
先生の言う通りに、読書感想文に自分の体験談いれたのに…代表に選ばれなかった…

真面目に書いたのに、どうして評価されないのか…とお悩みのみなさん、それ本当に「体験談」になっていますか?
「私も友達とけんかをして、悲しかったことがある」
「自分にも、相手の気持ちを考えないで、無責任なことを言ってしまったことがある。だからこの本の主人公の気持ちがよくわかった」
これは「体験談」でしょうか?
読書感想文で評価される「体験談」というのはこういった文章ではありません。
審査員である先生方は、もう一歩先を読みたいのです。
私は十数年間国語教師として、校内選考から地区審査まで、数えきれないほどの読書感想文を読んできました。
本を読んで、どう自分の体験談を書いたらいいのか、お伝えしていきます。
この記事を読めば、
・なぜ自分の体験を書いているのに評価されないのか
・先生は読書感想文のどこを見ているのか
・「あらすじ+感想」で終わらせない書き方
・生成AIをどう使えば安心して提出できるのか
がわかります。
体験談が評価されない作文の共通点(審査側の視点)

「体験談」が出来事の報告だけで終わっている
「私も〜だった」という書き方は、体験談ではなく出来事の要約に過ぎません。
「走れメロス」を例に考えてみましょう。
「走れメロス」は、主人公メロスがセリヌンティウスとの友情のために死力を尽くして走り抜き、見事暴君ディオニスを改心させるという有名なお話です。中学国語の教科書にも採用されている太宰治の作品です。
このお話を読んで、読書感想文を書いた生徒も多くいます。以下、よくある文を紹介します。
私も友達に噓をつかれて、もう信じられないと思った経験がある。でも「走れメロス」を読んで、信じる勇気が人間関係を深めるんだ、ということに気がついた。
一見すると、整っていますし読書感想文として良さそうです。
でも、この文にはあなたがどんな体験をしたのかは書かれていません。
つまり、「共感した」という結論だけが書かれていて、そこまでのあなたの思考や葛藤がわかりません。
審査員が知りたいことは、
どんな嘘をつかれて、どうして信じられないという気持ちになったのか。
そんなあなたが「走れメロス」を読んだことで、心情や考え方にどんな変化があったのか。
ということです。
感情が「形容詞」で止まっている
再び「走れメロス」を例に考えてみましょう。
自分にも妹がいるが、妹のために寝ずに走って、なんとか結婚式を挙げてやりたいだなんて思えるだろうか。メロスの妹への愛はすごいと思った。
このような感想を書いたとします。
「すごい」は「何が」すごいのでしょうか。
読書感想文において「すごい」を使うのは、本当にもったいないです。
普段話すときには使いやすくて、簡単に気持ちが伝わって、「すごい」は便利な言葉です。
便利だからこそ、「すごい」の一語では、感情を説明しきれません。
感情を分解して書くと、審査員はあなたの「考えた道のり」を追うことができます。
「すごい」「悲しい」「楽しい」「おもしろい」
このような「感情を表す形容詞」を書きそうになったら、「何が?」と自分に尋ねてください。
「何が」すごいのか。
「何が」悲しいのか。
「何が」楽しいのか。
「何が」おもしろいのか。
さらに言うならば、「感情を表す形容詞」に頼りすぎず、自分の感情を書き表してみましょう。
例えば先ほどの文ならば、次のように書き換えられるかもしれません。
メロスの妹への愛は、誰にでも真似できるものではない。自分を犠牲にしてでも家族のために動くなんて、自分よりも大切な存在だと思っているということだと思った。
「何が」すごいのか。
・誰にでも真似できないことをしていること
・自分を犠牲にしていること
・自分よりも妹のことを大切にしていること
が、すごいと思った、と分かります。
✖ 評価されにくい感情の書き方
「すごい」「悲しい」「楽しい」「おもしろい」など、一語で自分の感情を表している。
○ 評価されやすい感情の書き方
「すごい」「悲しい」「楽しい」「おもしろい」などを使わず、「何が」自分の感情を動かしたのか説明されている。
本との接点が弱い(体験が独立している)
審査員が見ているのは、体験そのものではなく
「読書によって、その体験の意味がどう変わったか」です。
自分のことを書いていると、たまに熱が入りすぎて、体験談が本から遠ざかってしまうことがあります。
自分の体験談を熱く語るのはいいのですが、読書感想文ですから、読書をして得たことから離れすぎてはいけません。
「走れメロス」を読んで、友情について書いていたのに、その友達と出会った野球の試合のことを書いていた、というようなことは、生徒の作品を読んでいるとよくあります。
気づけば200字書いていた…となると、原稿用紙の半分です。
体験談が脱線しすぎて長くなってしまうと、読んでいる側は「何が言いたいのかな?」となってしまいます。
体験談は長さではなく、「本とどう結びついているか」で評価が大きく変わります。
評価される「体験談」はこう書く|考え方と手順

① まず「出来事」を具体的に思い出す(5W1H)
先ほどの例で、考えてみましょう。
私も友達に噓をつかれて、もう信じられないと思った経験がある。でも「走れメロス」を読んで、信じる勇気が人間関係を深めるんだ、ということに気がついた。
「私も〜がある/だった」という一文では、審査員は状況を思い浮かべられません。
【5W1Hを使った 書き換え例】
小学校5年生のクラス替えで、初めて同じクラスになったTさんという子がいた。
Tさんは、とても明るくて、マラソン大会でいつも1位をとるくらいスポーツが得意で、学年でも有名な子だった。
私はTさんと話してみたいな、仲良くなりたいなと思っていた。
そんな気持ちでいたある日の帰り道、ずっと同じクラスで仲良くしてきた友達Mが、私にこう言った。
「Tさんさ、あなたのことなんか暗そうで苦手って言ってたよ」
このように、書くと状況がしっかり伝わります。
まずは、【5W1H】を使って出来事を具体化します。
・いつ(When)
・どこで(Where)
・誰が(Who)
・何をしたか(What)
・どのように(How)
すべてを書く必要はありません。
「その場面が想像できるか」を基準に、必要な要素だけを選びましょう。
【5W1Hを使った書き換え例】を見てみると、次の4点が明確です。
・いつ(When)…5年生
・どこで(Where)…学校、帰り道
・誰が(Who)…友達M
・何をしたか(What)…私に言ってきた
この状況を読んだ審査員は
「これはつらい経験をしていそう…。」
と思うでしょう。
このあとが読みたくなる出来事です。
「体験談」は、個人的な話を深くする必要はありません。
少し丁寧に自分の体験を説明しましょう。
・体験を盛る必要はありません
・ドラマチックである必要もありません
読書をしながら思い出した自分の本当に体験したことを書けばいいのです。
② 感情は「一言」でまとめない
体験談というのは、
・どんな状況で
・どんなことがあって、
・そのときどんなふうに自分の感情が動いたのか
これを言語化することです。
先ほど書いた「出来事」で「状況」「あったこと」は説明できました。
続いて、「感情の動き」を書きましょう。
先ほどの例の続きで具体例を見てみましょう。
【感情を「一言」で書かない 書き換え例】
私はそれを聞いて怖くなった。どうしてそう思わせてしまったんだろう。
このあとTさんに話しかけることはできなかった。
しかし、それから3ヶ月後のあるとき、Mの話は嘘だったことが分かった。
なんでそんなこと言ったの!という怒りと、3か月もTさんに話しかけられなかったことへの悲しさで
頭がぐちゃぐちゃになった。
仲がいいと思っていたMから嘘をつかれたことで、私に教えてくれることは全部嘘なんじゃないかと感じるようになった。
中学校に入っても、なんとなく友達とは程よい距離をとって、あまり深く仲良くならないようにしてきたと思う。
「言語化」と聞くと、「言語化!?難しいこと言っている!」と思われがちですが、
上の文章は、難しい、整った語彙でしょうか?
感じたことをそのまま、自分がもっている言葉で表現することで、生き生きとした文章になります。
この出来事は、一言で言えば「悲しかった」経験かもしれません。
でも、その中には「怒り」もあれば、「自分への悔しさ」もあり、
一語では表せない感情がいくつもあります。
感情を書くときには、そのときの自分の気持ちを分解していろいろな単語で書いてみましょう。
この言葉がぴったりだ!と思う言葉を書いてください。
1つじゃなければ、たくさん書いてOKです。
よりあなたが感じた気持ちが「言語化」されて審査員に伝わります。
③ 本を読んで「その体験をどう捉え直したか」を書く
「体験談」の「出来事」と「感情の動き」を書くことができたら、
本を読んで、自分の体験をどう捉え直したか、を書きます。
ここが読書感想文の最も大切なところです。
読書を通して、これまでの自分の体験にどんな意味付けがされたのか、
自分の考え方にどんな変化があったのか、
これを読んでいる先生、審査員の先生に伝えましょう。
出来事と感情を書いただけでは、まだ読書感想文にはなりません。
では、例の文章の続きを読んでみましょう。
そんな中、授業で「走れメロス」を読んだ。クラスでは、「この王、ヤバい」、「友達人質とかありえない」という感想が出ていた。でも私は、Mのことを思い出していた。Mとはあれから疎遠になってしまっていて、クラスが離れてからは話していない。それでいいと思っていたけど、本当にそうだったのかなと思った。あのときまではとても仲が良かった。忘れ物をしたときは助けてくれたし、具合が悪いときにすぐに先生を呼びに行ってくれたのもMだった。どうして嘘をついたのか、きちんと聞けばよかったかもしれない。Mのことを信じていれば、私たちの関係はもっともっと深まったかもしれない。友達を信じるというのは本当に難しい。でも、信じた先にあるものが今とは違うものだったかもしれない、私はそんなことを考えていた。
このように、
私も友達に噓をつかれて、もう信じられないと思った経験がある。でも「走れメロス」を読んで、信じる勇気が人間関係を深めるんだ、ということに気がついた。
という文章を、「言語化」するととても長くなります。
2000字の中に、あらすじを書いている余裕は実はありません。
あらすじよりも、あなた自身の考えや迷い、変化を書いた方が、評価は確実に上がります。
大切なのは、作り話をしないこと。
これまであなたが経験してきて、読書をきっかけに思い出したことを書けばいいのです。
今回は「走れメロス」を例に考えたので、「友情」についての実体験が「体験談」になりました。
しかし、「体験談」は実体験だけではありません。
別記事「読書感想文の書き方完全ガイド!コンクールで【入賞】をねらう中学生へ」
では、「江戸のジャーナリスト 葛飾北斎」という本で書き方を紹介しています。
- 自分の実体験を書く
- 家族や友達の考え・言葉を書く
- 関連することを調べて考えを広げる
- 美術館・博物館・記念館などに行ってみる
- 本をきっかけに行動したことを書く
こういったことも体験談として書くことができます。
最近は、AIを使って読書感想文を書く人も増えています。
次は、なぜAIを使うと「体験談」が浅くなりやすいのか、
そして、どう使えば失敗しないのかについて考えていきます。
生成AIで書いた読書感想文を分析してみる|なぜ評価されにくいのか

① 生成AIに同じ指示を出すと、どんな文章ができるか
実際に、以下の指示で生成AIに文章を書いてもらいました。
みなさんも試しにやってみてください。
「走れメロス」の読書感想文を2000文字で書いてください。自分の体験談も入れて下さい。
先生に「体験談を入れて」と言われたから、AIにもそのように指示を出せばAIは書いてくれそうですね。
数秒でAIは次のように書いてくれました。
【冒頭文引用】
太宰治の『走れメロス』を初めて読んだとき、正直なところ私は「友情のために命をかけて走る話」という、少し大げさで現実離れした物語だと感じた。しかし読み進めるうちに、この作品が描いているのは単なる美しい友情ではなく、「人を信じることの難しさ」と「信じようとする勇気」なのだと気づかされた。
とてもよさそうです!文章として分かりやすく、読みやすく書けています。
「人を信じることの難しさ」と「信じようとする勇気」、整った美しい言葉です。
でも、正直きれいすぎます。
達観しすぎていて、中学生が書いた文とは少し距離があるように感じます。
「うまい文章」と「評価される文章」は、必ずしも同じではありません。
② 一見うまいが、審査員が評価しにくい理由
次に、「体験談」の部分を見てみましょう。
実は私自身、かつて「信じたことで傷ついた」と感じた経験がある。学生の頃、グループで一つの発表を仕上げる課題があり、私は友人に重要な部分を任せた。その友人は「必ずやる」と約束してくれたが、締め切り直前になっても準備はほとんど進んでおらず、結局私が徹夜で補うことになった。そのとき私は、「どうして信じてしまったのだろう」「最初から自分でやればよかった」と強く後悔した。それ以来、人に任せることや信じることに、どこか慎重になってしまった。
どうでしょうか?
一見すると「体験談」のようです。
しかし、書いている人の具体的な姿、想像できますか?
なんとなく輪郭がぼんやり見えるくらいで、はっきり見えてきません。
それは、
出来事が抽象的(5W1Hが弱い)
だからです。
たとえば
「学生」
「発表」「課題」「重要な部分」
「ほとんど進んでおらず」
この1つ1つの言葉に具体性がありません。
小学生なのか、何年生なのか。何の授業のどんな発表なのか。
どんな課題で、何を任せたのか。
友人は何をしなかったのか。
さらに、感情は「強く後悔した」の「一語」で書かれています。
「どうして信じてしまったのだろう」「最初から自分でやればよかった」
という気持ちには、後悔以外の感情もあるはずです。
怒りや、間に合わないことへの焦り、友人にがっかりした気持ち、などが想像できます。
もっと言うならば、友人が分担した課題をやってこなかったことが、
人を信頼できなくなるほどの出来事だったのでしょうか?
もし本当に「人を信頼できなくなるほどの出来事」だったとしたら、
そこには、もう少し説明が必要な背景があるはずです。
審査員は、読書を通して「どんな体験が思い出されたのか」または「体験したのか」
そして「どのように感情が動いたのか」を見たいのです。
具体性のない体験談は、書いている人の姿や温度が伝わってきません。
③ AIで書いた文章が校内審査で見抜かれやすい理由
そもそも、AIで書いた文章は校内審査を通らないと予想されます。
理由は簡単です。
校内審査員の先生はあなたの「国語の先生」だからです。
4月から新しい国語の先生になったとしても、夏休みまで約3ヶ月間、あなたの国語を担当している先生です。
どのくらいの文章力で、普段どんな言葉を使っていて、なんならあなたの活動や友人関係まで知っています。
これはあの生徒の話ではない、言葉遣いではない、というのはすぐに分かります。
ですから、校内審査を通って、まずは市町村の審査会への代表作品になりたいんだという人は、
全文をAIに任せることはしないほうがいいのです。
では、AIが助けてくれる部分はどこでしょう。
④ 生成AIは「伴走型の国語の先生」として使う

AIができることは「全文」を書くことではありません。
優秀な自分専用の国語の先生がそばにいると思いましょう。
あなたの学校の本当の国語の先生は、作文全部は書いてくれません。
ですが、「構成作り」を手伝ってくれます。
「書き方」や「間違い」を教えてくれます。
「下書き」を読んでアドバイスをしてくれます。
これをAIは素晴らしい速度と正確さで教えてくれます。

先生、ぼくはこのとき、悲しいっていうか寂しいっていうか、なんか言葉にできないんですけど、すごくもやもやして、次の日も友達に話しかけるの嫌になっちゃったんです。それを作文に書きたいんですけど、うまく書けなくて…
こんなふうに、学校の国語の先生に質問したら、先生は答えてくれるでしょう。
さらに質問を重ねてあなたの感情に合う言葉を一緒に探してくれるでしょう。
でも先生は学級みんなを見ていて、なかなか1対1では話せない。
それがAIにはできます。
「その言葉じゃない」「もっとこうなんだ」と納得いくまで議論してくれます。
AIにしてもらうことは、「あなたの先生になってもらうこと」です。
まずは書きたいことを書き出して、土台を作りましょう。
土台はこの記事の順に作っていけばできます。
土台ができればAIが手伝ってくれます。
0から1を任せるのではなく、1を2へ、3へ、そして10へ。
伴走してもらいましょう。
ただし、コンクールの応募規定に「AIの使用は禁止」と明記されている場合は、
必ずそのルールに従ってください。
ルールを守って、正々堂々と入賞を狙いましょう。
まとめ
一生懸命書いた自分の作文がなぜ評価されないのか、答えは分かりましたか?
「体験談」の部分が少し弱かったな、と気づいた人もいたのではないでしょうか。
「体験談」は
・出来事を具体的に書く(5W1H)
・感情は「一言」でまとめず丁寧に書く
・本を読んで自分の体験をどう捉え直したのかを書く
ことで、より密度の濃いレベルの読書感想文になります。
そして、「応募規定」でAIの使用を禁止していなければ、
AIを「専属の国語の先生」として伴走してもらいましょう。
読書感想文は簡単な宿題ではありません。
そこで入賞を狙おうと目標高く頑張っているみなさん。
是非この記事をヒントにあなたにしか書けない素晴らしい感想文を
国語の先生に読んでもらいましょう!
まずは校内審査を突破し、あなたの手元に賞状が届くことをお祈りしております。



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