教諭を辞める前に一番不安だったこと

黒板と黒板消し 教員の退職と働き方

※この記事は、
公立小・中学校で教諭として勤務したのち、
非常勤講師という働き方を選んだ筆者の実体験をもとに書いています。
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教諭辞めて、4月から仕事あるのかな?

これが、教諭を辞めるとき、私が一番不安だったことです。
この記事を読めば

・教諭を辞める前に、多くの人が感じる「不安の正体」
・非常勤講師という働き方の、リアルな現実
・「辞める=すべて失う」わけではない理由
・不安を抱えたままでも前に進むための考え方

 がわかります。

教諭を辞める前に抱いていた不安 ―非常勤講師という選択をする前に考えていたこと ―

夕方の誰もいない学校の廊下の写真

私の場合は、「今年度で教諭を辞める」という決断をしてから、
教諭として最後の1年間をスタートさせました。

新年度が始まって5月くらいには、当時の校長先生に退職の意向を伝えていました。
詳しくは「教員退職から非常勤講師へ!失敗しない準備と働き方」で、
退職を決めてからの1年間の過ごし方をお話しています。

非常勤講師に向けて、1年間の準備期間があっても
新年度4月からの勤務先が決まるのは、年度末です。

児童生徒の数がほぼ確定し、教諭や常勤講師の数も確定してから
非常勤講師の先生方の配置が決まります。

早めに声をかけられていても、
「やっぱり常勤講師でやってくれないかな?」
「新年度は非常勤講師の採用枠がなくなってしまった」
ということは、決して珍しい話ではありません。

ですから、「新年度の4月から仕事はあるのか」
これが一番の心配事でした。

さらに、今すでに非常勤講師をしている先生方が優先で、
仕事が決まっていくだろうと考えていたので、
教諭を辞めて、すぐに次の学校が決まるのかとても不安でした。

私は「国語」という、比較的先生の数が多く必要な教科です。
技能教科など、教科によっては非常勤講師の選択肢がない教科もあるかもしれません。

不安の正体を分解してみる【辞める前に感じていた3つの不安】

不安や悩みを書き出す女性の手元

収入がゼロになるのでは、という不安

もし非常勤講師としての働き口が決まらなかったら…
当然収入は0です。

教諭を辞めるときに「退職手当」が支給されますが、
しばらく働かなくても安心、という額ではありません。

それどころか、税金や社会保険料を自分で支払っていかなくてはならないので、
仕事がない=どんどんお金が減っていく
という感覚を覚えます。

退職手当の金額や、退職後1年間に実際に支払った税金・社会保険料については、
「40歳で教諭を退職!退職金と退職後に支払う税金額は?リアルなお金事情を公開」
で、具体的な金額とともにまとめています。

そして、非常勤講師は基本的には1年間の雇用契約です。
今年仕事があっても、
「来年も仕事があるか」は、わかりません。

いくら教師不足とはいっても、
通勤可能な範囲の中で、自分の担当教科の枠が
これからもずっとあるのか。

これは終身雇用の教諭時代にはない大きな不安です。
自分の頑張りでどうにかできるものではなく、
市町村や学校の状況に左右されます
そして次年度も仕事がある、とわかるのは3月中旬。

教諭時代の「安定」とは、
かなり性質の違う働き方だと感じます。

私自身、主人がしっかり働いてくれているとはいえ、子どもがいます。
奨学金の返済や家のローンなどもあり、
本当に退職していいのか?という不安はずっとありました。

教諭を辞めたら、教師として終わりなのではという不安

十数年、教諭として働く中で、
小学校・中学校の両方を経験し、担任や学年運営など、さまざまな役割を任されてきました。

異動のときには、ある程度どんな人物か校長先生同士のやりとりがあります。
これまでのキャリアやそのときどきの事情を考慮したポジションを
次の勤務校でも考えてもらえることが多いと思います。

しかし、非常勤講師になったら、これまでのキャリアはゼロになるのでは…
そういった不安を感じました。

履歴書1枚では到底伝えきれないこれまでの経験。
伝えてくれる人も、わかってくれる人もいなくなる。
そんなふうに感じました。

「この人だから、このポジションをお願いしたい!」
という人事ではなく、足りないところに入るだけの
「免許があれば誰でもいい」というポジションに入るんじゃないか。
そう思うと、これまでの自分がゼロになるような悲しい感覚を覚えました。

また、辞めた先生=何かある?という目線で見られるのではないか。
そして、「そうではないんです。これは前向きな退職です。」と伝えることもできずに
過ごしていくのではないか。
そんな不安もよぎりました。

自分としては前向きな、ライフステージに合った1つの選択であるはずの「退職」ですが、
最前線で踏ん張っている、頑張っている、
そういった「第一線」からは、自分は外れるんだ。

そんなことはないと自分で思っていても、
もう1人の自分が否定的な考え方をしてくる、
そんな心境でした。

まわりからの理解が得られないのではないかという不安

仕事そのもの以外にも、不安はありました。
それは、周りから退職に対して理解を得られるのか、という不安です。

教諭という立場は、とても安定しています。
就職するときは、親や親族はとても喜んでくれましたし、
親を安心させられたと感じました。

親世代は、現在のような転職・キャリアアップが主流の時代の人たちではありません。
「退職する」という事実を伝えるのは、なかなか抵抗がありました。

特に、主人の親族は教員一家ということもあり、
定年まで働いて退職金を得て生活している人が多くいました。

私たちにも、安心して老後を迎えてほしいという思いはあったと思います。
私の場合は、主人は私の退職に肯定的でしたが、
もしかしたら身近な人や友人から理解を得られない
そんな可能性もあると思います。

教諭を40代で退職する人というのは決して多くありません。
だからこそ、周りからの理解が得られないかもしれない、
心ない言葉をかけられるかもしれない、という不安が正直なところありました。

実際に動いてみて分かった「仕事」に関する現実

先生と子どもの授業風景

非常勤講師の仕事は、思っていたより途切れない

実際に非常勤講師になってみて、
同じ立場の多くの非常勤の先生方に出会いました。
20年以上ずっと非常勤で働いている方もいました。

非常勤講師の働き方には、実は多くの種類や雇用形態があります。
教科の先生の数が足りずに配置される場合もあれば、
授業をサポートする立場で雇用されることもあり、実にさまざまです。

産休・育休の代替教員は、常に不足しているので、
次の学校も決まっている先生がほとんどでした。

これは市町村で「どの教科の代替教員がどこにいるか」という情報が、
ある程度共有されているからだろうと思います。

昨今は、心の不調などで療養に入る先生も増えており、
非常勤講師を探している学校は多い印象です。

「教員免許がある」というのは強みです。

公立じゃなくて、私立学校で働くこともできます。
私は、非常勤講師2年目は私立高校に勤務しています。

私立高校の非常勤講師の先生方は、長く勤務している方が多いなと感じます。
異動がないこともあり、学校から大切にされていると感じました。

扶養内で働いている人もいれば、課外授業も担当している方もいるなど、
公立校以上に幅広い働き方をしているなと思いました。

公立校は予算が都道府県単位で管理されているため、
先生方一人ひとりの希望に柔軟に対応するのは難しい面もあると思います。
その点、私立は柔軟性があるかもしれません。

さらに、学校現場以外での働き方もあります。
たとえば学童の先生や、不登校支援員などの選択肢です。
午前中は中学校に勤務して、午後は学童の先生をしている先生もいらっしゃいました。

私も午前と午後、掛け持ちで勤務しています。
私は、日本語教師という別の資格を取得したので、
日本語学校で非常勤講師として勤務することも可能です。

実際の1週間の働き方や、掛け持ちの現実については、別の記事で詳しくまとめています。
非常勤講師の1週間の働き方|高校と日本語学校を掛け持ちして分かった違い 

非常勤講師の仕事は、意外と途切れませんし、
多様な雇用形態と、働き口があります。

「辞める=キャリアゼロ」ではなかった

当然ですが、退職したからといって、
これまでの経験年数がゼロになるわけではありません

見ている人、分かってくれる人はいます。
同業者ですから、この人に教員としての力はあるのか、授業力はあるのか、
そういったものは、履歴書で説明しなくても伝わってしまいます。

そして、同じ非常勤講師の先生がいることが多いので、
この立場こその悩みを共有したり、他の雇用形態についての情報を聞いたり、
より非常勤講師としての働き方を理解できるようになりました。

もちろん、失ったものもあると改めて気がついたこともあります。
退職してみて初めて感じた気持ちの変化については、こちらの記事に正直に書いています。
非常勤講師になって失ったもの・得たもの|教諭を辞めて見えた本音 

それでも不安がゼロになったわけではない

非常勤講師として働き始めても残っている将来への不安

非常勤講師の仕事は続けていけそうだ。
そう実感している今でも、不安が完全に消えたわけではありません。

やはり教諭時代に比べて、社会保障面は弱くなりました。
療養のための休暇制度はありません。退職金もありません。
休んでも安定した月給がもらえるわけではありません。

ただ、これらの不安は主に「健康面」「経済面」に関するものです。
不安の中身を冷静に見れば、対処できることもあります。
この点は、仕方ないんだと受け入れることもできます。

ただ漠然と不安を感じているのではなく、
「正体が分かっている不安」を受け止めている状況です。

「複業」できるようにすることで、経済面の不安は緩和されます。
万が一の備えを考えることで、コントロールできる不安もあります。

「急に働けなくなったらどうしよう…」
これは、教諭時代にも感じていた不安です。
コントロールできない不安は、非常勤講師だからというよりは、
子どもを育て、家庭をもっていれば誰もがもっている不安だと思います。

これは引き受けた上で、リスク分散ができるように家族で話し合うなど、
非常勤講師でなくても、やっておいていいことだと思います。

不安だったからこそ、決めていた自分なりのライン

不安を数字で整理し、自分なりの判断基準を決めているイメージ

毎月の給料の額を見たり、ボーナス月でも口座残高が増えない現実を見たりすると、
働いても働いても、どんどんマイナスになっていくんじゃないか…
そんなふうに極端に感じてしまうことがあります。

私は、退職手当を「臨時ボーナス」として捉えることにしました。
つまり、退職手当をなるべく減らさずに生活する、という方針です。

ですから、貯金額がこの額を下回ったら「一度、常勤講師として働く」
というボーダーラインを決めています。

どうしようもなくなったら、もう一度教員採用試験を受ける。
いざとなったら「1年・2年だけ」常勤講師として働く。
そういった選択も可能です。
経験と教員免許があれば、比較的可能な選択肢です。

具体的な数字で不安を客観視すること。

そして、いざというときに「どうにかなる道」を自分は持っている、という意識でいること。
これだけで漠然とした不安をずっと持っていることはなくなりました。
経済面に関しては、貯金額は大きく増えないけど、
大きく減ることもあまりない、というのが今のところの実感です。

辞めるか辞めないかではなく、「選択肢を知る」ということ

辞める・辞めない以外にも選択肢があることを示すイメージ

とにかく今の仕事の仕方がきつい。
先生を辞めたい。仕事を辞めたい。

そう追い詰められているときは、
この辛い状況を抜け出すには、辞めるしかない。
「辞める=退職=全部失う」
そんな思考になりがちです。

今仕事がつらい。
その状況を抜け出す答えは、
「辞めるか」「辞めないか」の2択ではありません。

「教諭」という立場は、辞めても
「先生」を辞めるわけではありません。
「働き方」を変えることができます。
その選択肢は意外にもたくさんあります。

実際に「辞める」となれば、変化に対する不安も感じます。
しかし、実際に非常勤講師という働き方に変えてみると、
周りに、同じような立場の仲間が意外といることに気がつきます。
そして、働き方も実にさまざまです。

非常勤講師に興味がある方。
もし、学校内に非常勤講師の先生がいたら話しかけてみてください。
なかなか話す時間がないのが現実だと思います。
非常勤講師の先生方も、教諭や常勤の先生方が忙しいのは重々承知しているので、
あまり話しかけてはこないのではないかと思います。

私も教諭時代、非常勤講師の先生に思い切って話しかけてみました。
印刷室で偶然お会いしたとき、チャンスだ!と思いました。
話してみると、元教諭で、年齢がとても近いことがわかりました。
偶然にも上の子の学年が同じであったことなどもあり、
おうちに遊びに行くほど仲良くなりました。

そこで非常勤講師の働き方について、現状をいろいろと教えていただきました。
「給料は半分だけど、仕事は10分の1になりました」
という言葉は私の心に刺さりました。

先生としてのいろいろな働き方は、
実は、すでに身近なところに情報源があるのかもしれません。

まとめ

教師として自分に合った働き方を選んでいくイメージ

退職して、非常勤講師として働こう。
そう決意したとき、一番不安だったのは「仕事があるか」ということでした。

ただ振り返ってみると、
不安の正体は「仕事そのもの」よりも、
この先、この働き方で本当に大丈夫なのかという
**「未来への不安」**だったのかもしれません。

不安は、どのような立場でも誰にでもあるものです。
大切なのは、その不安に対して
考えられる選択肢や対策を知っておくことだと思います。

解決策とまではいかなくても、
この記事が、みなさんにとって
「先生として働き続けるための選択肢」
広げるきっかけになれば嬉しいです。

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