はぁ…。今年もまた読書感想文か…原稿用紙5枚も書けないし、しんどいなー
お悩み中の中学生のみなさん!私と一緒にレベルの高い作文、仕上げていきましょう!
こんにちは。笹島です。読書感想文が書けなくてお悩みのみなさん。この記事を読んで、一緒に作文仕上げていきましょう!この記事では、読書感想文コンクールで上位入賞を狙うあなたのために、やや難易度高めな解説をしています。入賞までの完全ガイドです。
コンクール?いやいや、そんなのどうでもいいから、とりあえず終わらせたいだけだから!という国語嫌いなみなさんはこちらの記事で「もう読書感想文で悩まない!サクッと仕上げるコツ5つ」をご紹介しておりますので、そちらをご覧ください。
読書感想文コンクールの仕組み
読書感想文コンクールとは、以下のような流れで、段階的に審査が行われるコンクールです。最終的な賞のトップは、中央審査会(全国コンクール)の「内閣総理大臣賞」になり、新聞にも受賞作品が掲載される大きなコンクールになっています。だいたい夏休みの課題として設定されていますね。
校内審査はもちろんですが、都道府県単位のコンクールにも国語の先生方が携わっています。
私は市町村コンクールの審査員を毎年務めています。そして、「あ、この作品は都道府県の審査でも上位に入るな」という作品はだいたいわかります。
そんな国語の先生である私が、読書感想文の書き方に真剣に向き合おうというみなさんに、コンクール入賞レベルの書き方をお教えします。
この記事を読み終わるころには、よし書くぞ!という気持ちが高まっていることと思います。一緒に頑張りましょう!
読書感想文は「題名」&「書き出し」が9割!
まずは校内審査を突破しましょう!
校内審査をする国語の先生方は、どれくらいの期間で代表作品を決めているのでしょうか。
答えは5日~7日程度です。夏休み明けの提出日から、市町村審査に作品を送付するまでの期間は約1週間。その間に代表生徒に一度書き直しをお願いする、となると選出期間はもっと短くなります。
あなたの中学校は何クラスあるでしょうか。学年に3クラス以上のクラスがある場合、国語の先生はその短期間に100作品以上読まなくてはなりません。休み明けの仕事は他にもたくさんあります。真面目な先生は夜遅くまで目を通すかもしれません。
が、実情は題名×書き出し×文字数でかなりの数の作品を落選させています。
さらに、課題図書を読んで作文を書いてくる人は比較的少ないので、課題図書で感想文を書いた方が選出される可能性が高まると思います。
2022年度の「内閣総理大臣賞(最優秀作品)」中学校の部の受賞作品は課題図書で書かれた作文です。
ですから、校内審査突破を目指すならば、次の4つのポイントをおさえましょう!
- 「□□□を読んで」という題名は使わない
- 「私が▢▢▢を読んで思ったことは〇つあります。」という書き出しは使わない
- 2000字ぴったりを目指して書く(6枚目の3行目まで書くとぴったりです)
- 課題図書を読んで感想文を書く
まずはこのことを頭に入れて、本を読み始めましょう。
STEP1 下準備 ふせんを貼りながら本を読む
本を読むところから読書感想文は始まっています。読む本を決めたら、ふせんを手元に置いて、読書開始です。次のポイントに出会ったら、そのページにふせんを貼っておきましょう。メモを書いて貼ると後が楽ですよ!ふせんは10枚程度貼れるといいと思います。
- 本の表紙やタイトルから感じたこと
- 書き出しを読んでの印象
- 共感できたところ、共感できなかったところ
- 自分と似ていると思った考え方、出来事
- 感動したところ、心が動かされたところ
- 勉強になったところ、真似したいところ
ふせんにメモしたい内容は次のことです。
- そのとき感じたこと、考えたこと
- 印象的な登場人物のセリフや、心に残った表現
- 思い出した自分の体験談があれば簡潔に書いておく
「そのとき感じたこと、考えたこと」はなるべく具体的にメモしておきましょう。「すごい」「感動した」などの浅い言葉ではなく、「主人公の気持ちが痛いほど伝わってきて、胸の奥が苦しくなる感覚を味わった」というように、自分の言葉で、そのときの思いをそのまま書きましょう。
自分の感想をどのような表現で書くか、これが読書感想文の質を決めます。
自分の気持ちが動いたことを簡単な表現で済ませてはもったいないです。
- ×すごいと思った
- ×感動した
と簡単に書くのはやめて、別の言葉を使って、自分の気持ちを詳しく書き表す努力をしましょう。
読み終えたころには「構成」の原案ができあがります。
いきなり原稿用紙に書いてもうまく書けません。書く前の下準備がとても大切です。このふせんを貼る作業をすれば、スムーズに書くことができます。
【実例】令和4年度の課題図書「江戸のジャーナリスト 葛飾北斎」を読んでみた
令和4年度の課題図書を使ってSTEP1を実際にやってみましょう。
写真のような感じで、ふせんにメモを書き残しながら読みます。私はこのページの「一つのことや場所に安住せず、好奇心いっぱいで、新しい分野に向かっていく。」という表現が気になったのでふせんを貼りました。ここで何を思ったかを一緒に書き込んでおきます。「こわいことだけど、私もそんな人生が魅力的だと思う。」とメモしました。
このように読み進め、全部で9か所ふせんを貼りました。最後の一枚はここに貼りました↓
本文でなくても、あとがきや奥付けなど、何か思ったことがあればメモしておきましょう。
STEP2 テーマと構成 ふせんを使って書く順番を整えよう
ふせんを貼り終えたら、ふせんに書いたメモを眺めながら、中心テーマを決めていきましょう。最も伝えたいことがそのまま「題名」や「書き出し」につながります。
テーマが見えてきたら、書く順番=構成を決めていきます。本に書かれている順番でもいいですし、入れ替えてもOKです。ふせんを並べ替えながら作文用紙に貼っていきます。だいたい200字(原稿用紙半分)で改行すると、10段落構成になるイメージです。ふせんを10枚貼れば、200字ごとに話題も切り替わるので、テンポのよい感想文になります。
【実例】テーマを決めて作文用紙にふせんを貼っていく
実際に貼った9枚のふせんを読み返してみると、「死ぬ間際まで絵を描き続けた北斎の生き方がかっこいいと思っている」という共通テーマが見えてきました。
1番に書きたい内容を選び、本からふせんを外して、作文用紙に移しました。ページがわからなくなってしまうので、ページを追加記入してあります。
STEP3 書く① 書き出しを考える
ここまできて、いよいよ文章を書き始めます。題名は最後に決めるので、書き出しを考えましょう。書き出しは、「読み手=審査員」の興味を引く文であることが重要です。次の5つのヒントから書き方を選びましょう。
- 疑問形で始める。「・・・・・・・だろうか?」
- 印象に残った言葉の引用から始める。「〇〇〇〇〇〇〇〇。」
- 中心テーマを短文で言い切る。「・・・・・・・。本を読み終えたときこう感じた。」
- 本との出会いを短文で語る。「なんて鮮やかな表紙なのだろう。私は思わず本を手に取った。」
- 五感を使った表現で書く。「ちりん、ちりん、優しい音色が耳の奥で響く。」
興味を引く文というのは、短文であることが大切です。書き出しからだらだら書くことはやめましょう。その先を読んでみたい、と思わせることができれば校内審査を突破する確率はぐんと上がります!
【実例】ヒント5つを使った「書き出し」の例5パターン
一番初めにもってきたふせんに書いた内容は、
「老後」という概念はなくて、死ぬまで成長を続け、一つのことを極める生き方。究極の幸せのようにも思えた。
という内容です。ヒント1から書き出し文を考えていきましょう。
1.疑問形
「究極の幸せ」とは何だろう?私はこの本を読んで、その答えを得たように思う。
2.言葉の引用
「北斎の辞書に『老後』はありません。」著者はこう書いている。平均寿命が延びる中で、何かとニュースでよく聞く「老後の問題」。
3.中心テーマを言い切る
「究極の幸せ」とは、死ぬまで成長を続けられる何かと出会い、その道を極めること。私はこの本を読み終えて、この結論にたどり着いた。
4.本との出会い
「江戸のジャーナリスト 葛飾北斎」、葛飾北斎は確か浮世絵師だったと思ったが、この本のタイトルはジャーナリストといっている。これはどういう意味なのだろう。
5.五感を使う
ザッパーン…大波がはじける音が頭の中に響く。その奥には凛とした富士山が見える。有名な浮世絵「神奈川沖浪裏」の作者「葛飾北斎」。
ヒント4と5に関しては、中心テーマからは離れますが、他のふせんに書いた内容を使いました。このような書き出しで書かれた作文ならば、先生も先を読まずにはいられません。
STEP4 書く② 本文を書く
ここからは2000文字を目指して文章を書きます。2000文字というと先が長く感じますが、一段落ずつ、200文字1ブロックで書いていきましょう。書いているうちに8段落、9段落で終わっちゃった、となってもOKです!
本文を書く上で気をつけたい点は次の3点です。
- 段落と段落をスムーズにつなぐ
- あらすじを書きすぎない
- 体験談を入れる
段落と段落をスムーズにつなぐためには、接続詞を使います。「そして」「さらに」「また」「次に」「ところが」などです。
そして、本のあらすじは簡潔に、を心がけて書きます。「審査員はその本をもう読んでいて知っている」と思って書いてください。「でも数年前に呼んだからちょっと忘れてるかも」くらいの気持ちで少し説明を足して書いてあげる、程度がちょうどいいです!以下に例文を書いてみます。
×「みさは、主人公を助けるために小さなウソをつきます。」
〇「主人公の友達、みさは主人公を助けるために小さなウソをつきます。」
このように、「みさって誰だっけ…」とならないように少し補足してあげましょう。
また、本文中には自分の体験談を必ず書いてください。体験談なんてない、という場合は体験談を作るというのもよい方法です。ポイントをまとめておきますので、使えるものを選んで書いてみましょう。
- 実体験を書く
- 周りの人のことを書く
- 関係する内容を検索して知識を広げる
- 美術館や博物館、記念館に行ってみる
- とにかく行動を起こす
本の内容にもよりますが、【実例】で使っている「江戸のジャーナリスト 葛飾北斎」のような本ならば、葛飾北斎について調べたり、作品を図書館で見たり、実際に北斎に関する美術館を訪れてみたり…なんてこともできます。
本を読んで思ったことを家族に話してみて、感じ方の違いを感想文に取り入れる、というのもいいですね。
周りにいる友達のこと、家族が言っていたこと、ニュースで聞いたことなど、自分の生活と重ねて感想文を書くことが大切です。
本の世界から、自分の生活につなげて書く、ことを意識して書きましょう。
STEP5 題名を決める
2000文字書きあげたら、読み返して題名を決めましょう。「中心テーマ」をそのまま題名にすればOKです!【実例】で取り上げた「江戸のジャーナリスト 葛飾北斎」の読書感想文の題名は、私だったらこうします!
北斎が教えてくれる「究極の幸せ」
中心テーマが見えてくれば題名を決めるのも簡単です。
まとめ
コンクールで【入賞】を狙うためにはまず、校内審査を突破しましょう。題名×書き出し×文字数を意識すれば突破の確率はぐんと上がります。
さらに、本文の中に自分の体験談がしっかり書かれていて、あなたが読書を通して感じた「中心テーマ」が読み手に伝われば、市町村審査の突破も難しくありません。
その先、都道府県の審査を突破し、全国コンクールを目指すにはやや厚い壁があります。是非公式ホームページから過去の受賞作品を読んで研究してみましょう。都道府県単位の入賞作品は冊子になって、学校の図書室や国語の先生の手元にあると思いますので、それを読んでみるのもいいですね。
自分の書いた文章が他の人に認められて、賞状がもらえるって嬉しいことです。
さぁ、気合を入れて、ふせんと鉛筆を手に読書を始めましょう!