
教諭を続けていくのはしんどい…非常勤講師になったらもう少し楽に仕事ができるかな…

実際に教諭を退職し、非常勤講師として働いている私がお話します。
私は公立小・中学校の教諭として十数年勤務し、
40歳で退職し今は非常勤講師として働いています。(詳しいプロフィールはこちら)
教諭時代の激務に比べ、家族との時間が大幅に増え、心のゆとりも持つことができています。
しかし、もちろん失ったものもあります。
働き方の詳細は別記事で書いていますので、こちらをご覧ください。
この記事を読めば
- 非常勤講師になって「実際に失ったもの」と「得られたもの」の両方が分かります
- 教諭を辞めるという選択を、感情だけでなく現実的に考える視点が持てます
- 今の自分に合った働き方を考えるためのヒントが得られます
がわかります。
非常勤講師になって失ったもの

非常勤講師になれば、仕事は楽になる。
それは確かにそうです。
「収入が減る」ということは辞める前から分かっていたことですし、
収入の心配を何とかすれば…と思っていました。
しかし、実際に非常勤講師になってみて
失ったものは収入の額だけではないと感じています。
生徒の人生に深く関われなくなったこと
非常勤講師は、授業を担当することが主な役割です。
会議への参加はなく、学級経営にも関わりません。
出勤は授業開始前、退勤は授業終了後。
そのため、生徒に関する情報が自然に入ってくる環境ではありません。
そのうえ、先生が足りていないところに入るわけですから、
学年担当など関係なく多くのクラスをもちます。
特別支援学級の授業を担当することもありました。
ですから、毎日決められた授業数をしっかりこなしていくことに精一杯になります。
学級担任、学年主任だったころと比べて、
1人ひとりの生徒とじっくり向き合える時間はなくなりました。
授業だけの関係性ですから、
登校してきたときの様子、休み時間の様子、放課後は何をしているのか、
そういったことを目にする機会はありません。
どんな進路を考えていて、どんな家庭背景をもっていて、何を悩んでいるのか。
教諭時代には当たり前に見えていた生徒の内面は、非常勤講師ではわかりません。
授業の時間に見える姿しかわかりませんから、
この生徒に今必要な、効果的な声掛けは何なのか、
これは本当に分からなくなりました。
「昨日の試合、シュート決めたんだってね!すごいね!」
「〇〇先生に美術の作品見せてもらったよ!プロみたいな絵でびっくりしたよ~」
というような声掛けはできなくなってしまいました。
友達関係や家庭のことで悩んでいたり、生徒指導上の問題があったりしたときに、
授業中の生徒の様子を見て、わかることやできることはたくさんあります。
しかし、今の立場では授業以外のことで、生徒を認めたり助けてあげたり、
ときに厳しく指導したり…ということは非常に難しいです。
教諭時代は、日常生活での小さな変化を言葉で伝えることができていました。
「あれ、なんか暗いね。どうしたの?」
「この前の発表、堂々としてたね。前は恥ずかしいって言ってたのに頑張ったね!」
しかし今は、「授業中の生徒」という1部分しか見えません。
このことは、私にとってはとても寂しいことでした。
非常勤講師になって初めて、
「生徒を深く知ることができる立場」を手放していたんだと気づきました。
学校の「中心」から離れたと実感した瞬間
教諭時代最後の1年間は、中学校で学年主任になりました。
担任を希望していましたが、若い先生が増え、いつまでも担任ではいられなくなりました。
このときすでに、「担任の先生」ではないことに寂しさを感じていました。
学校行事も一緒に盛り上がったりがっかりしたりできるのは、
担任の先生の特権です。
生徒が「先生―!」と呼ぶのはだいたい担任の先生なので、
少し距離ができてしまったような感覚でした。
非常勤講師は、その距離がもっと広がります。
学校行事にはほとんど参加しません。
体育祭や合唱コンクールなど、学級がどの方向に向いて頑張っているのか、
結果はどうだったのか。
学校のホームページで知るくらい外部の立場です。
学校というのは、授業だけで成り立っている場所ではない。
学校の先生は、授業だけをしている人ではない。
非常勤講師になって初めて、
学校という場所が、どれほど多くの役割と関係性で成り立っているのかを実感しました。
・生徒をはぐくむものが授業だけではないこと
・いろいろな面が生徒を成長させていること
・非常勤講師が担っているのはほんの一部であること
を身をもって実感しています。
収入・将来の見通し
収入については、教諭時代の半分以下まで減りました。
経済的な安定は失ったものです。
ボーナスもありませんし、授業がない日が多い月は収入が大きく減ります。
これまで給与から支払われていた社会保険料も自分で払わなくてはなりません。
退職金の金額や、退職後1年間に実際に支払った税金・社会保険料については、
「40歳で教諭を退職!退職金と退職後に支払う税金額は?リアルなお金事情を公開」
で、具体的な金額とともにまとめています。
また、病気や事故など自分に何かあったとき、
教諭という立場でいれば、守ってくれるものがあります。
休職することもできますし、福利厚生面が充実しています。
しかし、非常勤講師にはそういった守ってくれるものがありません。
働けなくなった場合、収入もゼロです。
これまで以上に自分の身体が資本となります。
そして、退職金もありませんので、「安定した老後」という見通しは
失ったものかなと思います。
将来のことを考えて不安になる…という方は、
非常勤講師という働き方は少しリスキーかもしれません。
非常勤講師の待遇が悪いというよりも、
正規教諭の保障がそれだけ手厚い、という表現のほうが正確かもしれません。
それでも、非常勤講師になって得たもの

子どもと過ごす「時間の質」が変わった
非常勤講師になって得た、いちばん大きなものは「子どもとの時間」です。
それは、単に「一緒にいる時間が増えた」ということだけでなく、
これまでとは「質」が変わったと思います。
教諭時代は、家に帰ってきてからの時間があまりにも短く、
子どもたちから聞いておかなければならないことを確認することで精一杯でした。
学校からの連絡や予定、どうしても困っていること。
「算数のノートがない」と夜に言われると、
「どうしてもっと早く言わないの!」
と、ついイライラしてしまうこともありました。
非常勤講師という働き方になってからは、17時には家にいます。
宿題を見たり、学校で先生が言っていたこと、友達との会話を聞いたり、
連絡事項ではない、とりとめのないおしゃべりをする時間が増えました。
すると不思議なことに、
「あ、ノートもうすぐなくなるんだった」
と、教えてくれるようになりました。
こちらの余裕のなさは、子どもたちにも伝わっていたのかもしれない。
そう感じました。
もうひとつ変化したのは、
自分の仕事の話を、子どもたちにするようになったことです。
「こんなおもしろい生徒がいたよ」
「次の授業では、こんなことをやろうと思ってるんだ。」
「お母さんは、こういう仕事をしているんだ」
と、子どもたちが理解してくれるようになった気がします。
その結果、
「先生って、準備たくさんしてて大変なんだね」
と、自分たちの担任の先生を見る目も少し変化したようです。
学校では、生徒にかけるべき言葉が分からなくなってしまいました。
けれどその一方で、
自分の子どもたちの環境は、以前よりも把握できるようになりました。
友達の名前。
今学習していること。
ちょっと嫌だったこと。
そして、楽しみにしていること。
「ちょっと」くらいの出来事は、
忙しい親には言わなかったのかもしれません。
子どもたちの毎日の「ちょっとした話」を
たくさん聞ける今の生活は、私は幸せだと感じています。
私が教諭を辞めたとき、長女は思春期の入り口にいました。
もう、ある程度は一人でできる年齢です。
保育園のころのように、分かりやすく「ママ―!」と泣くこともありません。
思春期の子どもの変化は、
気をつけて見ていないと、見過ごしてしまうことがあります。
中学校で担任をしていたころ、
「毎日見ているからこそ気づけることがある」と思っていました。
それは、我が子も同じでした。
一緒にいる時間が増えたことで見えてきた、思春期ならではの小さな変化。
この時期に、子どもの側にいられる時間を持てたことは、
私にとって、とても価値のあることだったと思っています。
授業に集中できる教師になれた
非常勤講師になって、
「授業に集中できる環境」を得たことも、大きな変化でした。
教諭時代は、
「もっと授業の準備をする時間があったらいいのに」
といつも思っていました。
今は、授業数だけを見ると、教諭時代よりも多く、準備は大変です。
勤務時間は授業で埋まっているため、
勤務時間内に授業準備をすることは、正直ほとんどできません。
勤務時間や授業準備の実態については、
「非常勤講師の1週間の働き方|高校と日本語学校を掛け持ちして分かった違い」
で詳しく書いています。
そのため、私は早めに出勤したり、土日に時間を作ったりして、
授業準備をしています。
一見すると大変そうですが、
私にとってこれは「大変なこと」ではありません。
むしろ、楽しく取り組めています。
他の業務に集中力を奪われることなく、
ただ授業のことだけを考えられるからです。
準備の流れも次第にルーティーン化し、
効率よく進められるようになりました。
これまでバラバラだった教材やデータも整理でき、
授業準備全体が、以前よりずっとスムーズになっています。
そうすると、
実際に授業をしてみて「ここは次、改善しよう」
と感じた部分にまで、手が回るようになります。
これは、とても良い循環です。
授業の準備がしっかりできれば、生徒の活動量も増え、
授業そのものが、少しずつ充実していきます。
授業でしか生徒と関われないからこそ、
授業は全力でやる。
前向きに取り組めているこの環境が、
今の働き方の心地よさの一つです。
自分の人生を自分で選んでいる感覚
十数年間勤めた教諭を退職するという選択は、
多くの人にとって「大きな決断」だと思われがちです。
実際退職するときには、「どうして?」
と、たくさんの人に驚かれました。
ただ、私自身は、勇気を出して大きな決断をした、
という感覚はあまりありません。
「辞めた」のではなく、
その時点の自分に合った働き方を「選んだ」
という感覚のほうが近いです。
この感覚を持てるのは、
教師という仕事が「教員免許があれば、また戻れる仕事」
だからだと思います。
教員採用試験の年齢上限は緩和され、
何歳になっても教諭に戻るチャンスはあります。
また、非常勤講師から常勤講師へ切り替えることも、
比較的現実的な選択肢です。
確かに、退職金という大きな安心は手放しました。
それも含めて考えたうえで、
今は「自分の人生を自分で選択して生きている」
という実感があります。
家族がいる以上、
経済的なボーダーラインは意識しています。
貯金額など、目に見えて不安になるような数字になったら、
1年、2年だけ常勤講師に切り替えて、体制を立て直す。
主人に万が一のことがあれば、
すぐに常勤講師になる必要が出てくるかもしれません。
そのときは、そのときで、
常勤講師の働き方を自分で選びます。
その時々で、
自分が何を大切にしたいのか、
何を守りたいのかを考えながら、柔軟に対応していく。
退職したから、すべてを失ったわけではありません。
経験は残っています。
十数年積み重ねてきた経験があるからこそ、
今の私には、複数の選択肢があると思っています。
失ったものと得たものを天秤にかけて思うこと

ここまでみてきたように、失ったものも得たものも、
本当はどちらも欲しいものです。
どちらも得られる生き方ができればいいのですが、
教諭という立場では、「自分の子どもとの時間」はなかなか得られないものだと思います。
教諭と非常勤講師、どちらがいいとか、どちらが正解か、
ということではありません。
今自分がいるライフステージ、大切にしている価値観。
人によってその答えは変わります。
主人は私と同じく教員で、教諭という立場ですが、
私とはちがう視点で教諭の仕事を見ています。
自分の子どもたちとの時間を増やすために、教諭の自分はどうすればいいか。
通勤距離を短くできる異動を希望したり、校種を変更したり、
主人も試行錯誤しています。
ただ、妻である私が家にいる時間が増えたので、
その点はとても助かると言ってくれています。
退職はすべてを捨てるような思い切った決断ではありません。
失うものと、得られるもの、そして家族の意見も聞きながら、
どんな選択肢があるか、ぜひ考えてみてほしいと思います。
今の私は、
・思春期の子どもたちとの時間を最優先できている
・教師としての経験値も失わない
・授業に集中したやりがいのある働き方ができている
今の私なりに納得できる選択ができていると思います。
こんな人は、一度「非常勤講師」という選択肢を考えてみてほしい

今、目の前の業務に追われ、しんどいと感じている方。
一度、選択肢として非常勤講師という道も考えてみてはいかがでしょうか。
・毎日の業務に追われ、ただただ疲れ切っている。
・目の前の生徒たちのこと、授業のこと、何も楽しいと思えない。
・職場の環境、保護者対応、生徒指導、本当につらい。
・自分の家庭を犠牲にしている。
こんなふうに感じている方は少なくないと思います。
私もその一人でした。
帰り道の運転中に、意味もなく涙が出て、気持ちが真っ暗になることもありました。
教諭という立場を降りても、教師でいることは可能です。
教諭でいながら、学校以外の場所で働くことや、研修に出ることもできます。
一度退職して働き方を変え、落ち着いたらもう一度戻ることもできます。
辞めるか辞めないか、ではなく、
様々な選択肢に目を向けるだけで、気持ちが少し楽になるかもしれません。
まとめ
教諭を辞めるということは、人生をかけた大きな決断ではありません。
そして、非常勤講師という選択は、教諭という立場から逃げた楽な選択でもありません。
非常勤講師という働き方は、今教諭という働き方に悩んでいる人、
すべての人に合う万能な答えではありません。
非常勤講師になったから失うものも、確かにあります。
それでも、得られるものも確かにあります。
非常勤講師だから得られるものは、数字では測れないかもしれません。
しかし、それが「今の自分には価値がある」と感じる人もいます。
教師の働き方は一つではありません。
今の自分に合った選択肢を考えてみることが、
今、苦しいと感じている働き方を少し変えるきっかけになるかもしれません。
非常勤講師という選択肢は、
在職中から少しずつ準備しておくことで、安心感が大きく変わります。
私が実際に行った、退職を決めてから非常勤講師になるまでの準備や流れは、
こちらの記事に詳しくまとめています。
→「教員退職から非常勤講師へ!失敗しない準備と働き方」
現場で、日々一生懸命働いている先生方が、
より前向きに先生という仕事に向き合えるよう、
この記事がヒントになれば幸いです。




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