読書感想文コンクールの審査の仕組み | 校内・市区町村審査で本当に見られているポイント

赤ペンで添削している 国語の授業

せっかく読書感想文を書くなら、賞状もらってみたいけど…。内閣総理大臣賞ってどこまで進めば選ばれるんだろう?

このような疑問をお持ちのみなさん。審査員を務めていた私が、コンクールの流れと審査員の見方をお話していきます!

この記事では、「青少年読書感想文全国コンクール」(以下読書感想文コンクール)
の仕組みについて解説します。

この記事を読めば、

・読書感想文コンクールが「校内→市区町村→全国」へ進む具体的な流れ
・校内審査・市区町村審査で、国語の先生が実際に見ているポイント
・学校で賞状をもらった作文が、どの段階まで進んだものなのか

が分かります。

読書感想文コンクールの審査の流れ

読書感想文コンクールは、次の5部10区分の部門があります。

●小学校低学年の部(1、2年生)/課題読書・自由読書  
●小学校中学年の部(3、4年生)/課題読書・自由読書  
●小学校高学年の部(5、6年生)/課題読書・自由読書  
●中学校の部/課題読書・自由読書  
●高等学校の部/課題読書・自由読書

それぞれの部門ごとに作品を審査します。

校内審査|まずはここが最初の関門

読書感想文コンクール審査の順番の図

読書感想文コンクールの審査は校内審査から始まります。
小学校も中学校も高校も、まずは校内で代表作品に選ばれないと、
次の審査の段階に進めません。

校内審査では、国語を担当している先生が審査員となり代表作品を選出します。

選ばれる作品数は、学校の規模により決められています。

児童・生徒・学級数で毎年変わるので、校内の募集要項には明記されていないかもしれません。

私が勤務していた市区町村では、だいたいクラス数×2程度の作品を選出していました。
「けっこう選ばれるじゃん。」と感じたかもしれません。
ですが、次の段階に進める「本当の代表」は各学年1~2点です。

次の審査会では各学校の代表が集まります。
クラス数×2の作品数では、作文が多くなりすぎて審査員が読みきれません。

これは市区町村や学校により異なると思いますが、
校内では「優良賞」と「優秀賞」を決め、
「優秀賞」が「本当の代表作品」として次の段階へ進んでいました。

「優良賞」は次に進まないのになぜ決めるのか。
それは、頑張って書いた児童生徒をできるだけ多く認めたいからです。

校内審査で選ばれた時点で「入賞」です。
多くの学校は、ここで賞状が授与されます。

ここで選ばれるための書き方は
「読書感想文の書き方完全ガイド!コンクールで【入賞】をねらう中学生へ」
の記事をご覧ください。

市区町村審査で実際に行われていること

校内で代表作品に選ばれると、
「市区町村・地区審査会(市区町村コンクール)」へ進みます。

私は国語の教員として、
校内審査と市区町村・地区審査会の審査員を毎年務めてきました。

私が勤務していた市区町村では、
各学校から国語担当の先生が1人ずつ審査員として参加していました。

学年ごとにグループ分けがされ、担当になった学年の作文を読む。
20編以上の作文を約2時間で読み、「最優秀賞」と「優秀賞」に分けました。

「最優秀賞」が次の「都道府県審査会(都道府県コンクール)」へ進みます。

だいたい各学年2点程度が「最優秀賞」に選ばれていたという印象です。

都道府県審査から全国へ|公式情報から見える仕組み

市区町村の審査を突破すると、「都道府県審査会(都道府県コンクール)」へ進みます。

ここで審査を担当しているのも、各市区町村から代表で参加している国語の先生方です。
しかしこの先の中央審査会(全国コンクール)は、
公式ホームページで以下のように書かれています。

中央審査会は東京において、小・中・高等学校関係者および学識経験者(甲斐雄一郎・文教大学教授、川北亮司・児童文学作家ほか、以上予定)などで構成する委員会で行います。(2025年度)

そして、各賞が決まります。

◎内閣総理大臣賞(最優秀作品)
課題読書、自由読書を通じて各部1編。賞状およびブロンズ像。

◎文部科学大臣賞(優秀作品)
課題読書、自由読書を通じて各部1編。賞状および盾。

◎毎日新聞社賞(優秀作品)
課題読書、自由読書を通じて各部5編。賞状および盾。

◎全国学校図書館協議会長賞(優良作品)
課題読書、自由読書を通じて各部6編。賞状および盾。

◎サントリー奨励賞(奨励作品)
課題読書、自由読書を通じて各部10編以内。賞状および盾。

◎入選賞(入選作品)
上記の最優秀、優秀、優良、奨励作品を除く都道府県代表として認められた作品。賞状およびオリジナル図書カード。

《学校賞》
◎内閣総理大臣賞、文部科学大臣賞、毎日新聞社賞、全国学校図書館協議会長賞、サントリー奨励賞を受賞した児童生徒の在籍校へ、賞状、盾およびサントリー学校賞。

各部門第1位の作品には、「内閣総理大臣賞(最優秀作品)」が贈られます。
これがこのコンクールのトップです。

校内審査の現実|時間のない中で何が見られているのか

添削する男性

では、校内審査の流れを詳しくみていきましょう。

校内審査は「時間との戦い」から始まる

読書感想文コンクールは、校内審査からスタートし、
全国コンクールまで続く大規模なコンクールです。

公式ホームページを見ると、表彰式の日程は決まっています。
だいたい毎年、2月上旬です。

そこまでに各段階の審査を終わらせなくてはならないのです。

各学校から市区町村コンクールへの提出期限は、
9月上旬(1週目あたり)であることが多いです。

夏休み明け数日で代表作品を決めなくてはなりません。

小学校ならばまずは担任の先生が読むでしょう。
35編前後を読まなくてはいけません。

中学校ならば、地域によりますが、
1学年4クラスとして、35人×4クラス=140編です。

夏休み明けはやることが多く、作文だけを読んでいる時間は、ほとんどありません。

では、審査員である国語の先生は何を見て、代表作品を決めているのでしょう。

全文を読む前に、まずチェックされる3つのこと

時間のない中、私がまずチェックするのは次の3点です。

①文字数(既定の文字数に近いか)
②題名・書き出し
③本当に自分で書いているか

①文字数について
字数については次のように決まっています。

【用紙・字数】
◇原稿用紙を使用し、縦書きで自筆してください。原稿用紙の大きさ、字詰めに規定はありません。
◇文字数については下記のとおりです。
 ・小学校低学年の部(1、2年生)本文 800字以内
 ・小学校中学年の部(3、4年生)本文1,200字以内
 ・小学校高学年の部(5、6年生)本文1,200字以内
 ・中学校の部 本文2,000字以内
 ・高等学校の部 本文2,000字以内
◇句読点はそれぞれ1字に数えます。改行のための空白か所は字数として数えます。
◇題名、学校名、氏名は字数に数えません。

中学校では、「本文2000字以内」です。原稿用紙で言えば5枚の分量です。
しかし、「◇題名、学校名、氏名は字数に数えません。」とあります。

題名・学校名・氏名で3行使っていた場合、
本文2000字とは、6枚目の3行目までが2000字です。

ここまで書いている生徒を見つけると、「この生徒は本気だ・・・!」と感じます。
本気で入賞を狙いに来ているという意気込みを感じます。
あきらかに計算して書いていますからね。

3枚以下の作文は1200字以下ということです。
いくら素材がよくても、ここから清書をして2000字にするには時間が足りません。
申し訳ないですが、3枚以下の作品を読むのは代表が決まった後です。

この時点ではじっくり読む作品からは除きます。
でもあとでしっかり読みます
国語が苦手な生徒が3枚も書いたら、それはすばらしいことですから。

苦手な方はこちらの記事
読書感想文の宿題をサクッと終わらせるための5ステップ【完全ガイド】
をご覧ください。

「国語の先生」としては、提出してきた作文を評価します。
しかし、「審査員」としては字数が少ない時点で落選と判断します。

②題名・書き出しについて
①の時点で半数ぐらいの作品が代表から外れます。
2000文字書くって大変なんですよね。

次に見るのは、初めの200字くらいです。
つまり原稿用紙1枚目の半分だけを読みます

次のような作品はほぼ落選です。

・題名が「( 本のタイトル )を読んで」
・書き出しが
「私が( 本のタイトル )を読んで思ったことは( 数字 )つあります。」

市区町村コンクールの審査会で、
この題名と書き出しの作品に出会うことはほぼありません。

題名と書き出しについてはこちらで解説していますので、
書き方を知りたい方はご覧ください。

③本当に自分で書いているか
最近は生成AIで作文を書くという人も増えていると思います。

全文をAIで書いている、大部分をAIが書いている、
これは、国語の先生にはわかってしまっています

なぜならあなたの国語を担当している先生だからです。

この言葉遣いは不自然だ… 
この語彙はあの生徒が使うには難しすぎる…

くわしくは、
読書感想文で「体験談」が評価されない理由|校内選考・入賞作品との違い」
の記事で解説しております。

AIは上手に使うことが大切です。
ちなみに筆跡も、あなたの字ではないとわかる国語の先生は多いと思います。
誰かに書いてもらった作文は、評価どころか先生の信用を失うかもしれません。

ここまで残って、ようやく「内容」で評価される

最初に見るポイント①~③をクリアした作品は、全文しっかりと読みます。
そして、代表作品を決定していきます。

この段階まで残ったら、内容で勝負です。
次の2点に注目して、審査員の先生は読んでいます。

・体験談が書かれているか
・この本を読んでこれまでの体験をどう捉え直したのか

体験談を書いたのに、なかなか評価されない!
そういうお悩みをお持ちの方はこちらをお読みください。

この段階まで残っている作品は…140編でスタートしたとしたら、
おそらく20~30編です。
入賞まではあと少し、です。

もう一点、入賞に近付くポイントがあります。
それは選んだ本が「課題図書」であることです。

課題図書で読書感想文を書く生徒はとても少ないです。
しかし、コンクールに「課題読書」と「自由読書」の部門がそれぞれありますから、
学校としては「課題図書」の作文もできれば出品したいと考えます。

同じレベルの感想文が残ったら、
課題図書を選んだ作文が有利になる可能性は高いです。
特に本にこだわりがなければ、課題図書を選びましょう。

市区町村審査で評価が一段階上がる作品の特徴

市区町村審査は「並べて・比べて」読まれる

市区町村の審査会では、各学校の代表の先生方が、
担当になった学年の作文をすべて読みます。

進め方は、各市区町村で様々かと思いますが、

だいたい、評価(ABCなど)とコメントを書く審査用紙に記入しながら
順番に読んでいく流れかと思います。

審査員は2時間程度の時間で一気に読みますので、
審査中は意識していなくても「さっきの作文よりいい、悪い」と比較しながら読んでいます。

不思議なことに、他の先生方と評価はだいたい同じようになります。
良い作文の基準は、国語の先生方の中で共通にあるものだと思います。

読み終わってからもめる、という経験はほとんどありません。

一段階上の作品が持っている共通点

審査会でよく聞くコメントは

「この体験談よかったですね」
「ここの感想の書き方がすごく伝わりますね」
「書き出しが秀逸だと思いました」

といったものです。

・書き出し
・感情の書き方
・体験談

ここは時間をかけて大事に書きたい部分です。
各学校の代表になる、優秀な作品と差がつくポイントです。

感情の書き方は、校内審査ではあまり見ないようなさまざまな言葉に出会います。
よく知ってるなあ!と思う難しい語彙に出会うこともあれば、
簡単な語彙なのに的確に感情が伝わってくるなあと思うものまでさまざまです。

自分の感情に向き合って言葉を探す、という書く姿勢が伝わります。

そしてこのレベルでより差がつくのは、
本の世界と自分の世界との往復が自然な文章です。

これは高度です。

ここまでできなくても、市区町村の審査は通れる可能性がありますが、
さらに上を目指すなら是非意識していきたいポイントです。

本の世界観と書いている人の世界が重なる部分があり、
それが作文の中で不思議な空間を生み出していることがあります。

これを感じた作品が、都道府県代表として全国コンクールに選ばれたことがあります。
やっぱりなあと思いました。

これはぜひ、過去の入賞作品を読んでみてください。

なぜ読書感想文は「校内・市区町村審査」が最重要なのか

全国コンクールは校内審査の延長線上にある

ここまで見てきたように、
読書感想文コンクールのスタートは「校内審査」です。

あなたの学年に4クラスあったとしたら、35人×4クラス=140作品
この中から次の審査に進める作品は1~2作品です。
わずか1~2%の確率です。

つまり、この段階でほとんどの作品は全国以前にふるい落とされます。

読書感想文コンクールで、上位審査会に進むためには
校内審査を確実に通ることが重要です。

逆に言えば、学年で1番いい読書感想文を書けばいいのです。
全国コンクールで読まれる作文なんて書けない!と思わずに、
学年で1番か…ちょっと本気でやってみようかな、と思ってみましょう。

その先に全国コンクールがあります。
内閣総理大臣賞に選ばれる作品も、スタートは「校内審査」から選ばれているのです。

校内・市区町村審査で見られているのは「その生徒らしさ」

その最重要の「校内審査」の審査員はあなたの国語の先生です。
国語の先生は、あなたのふだんの様子をよく知っています。

「どこまで本気で書いたのか」「努力したのか」が分かります。
その本と、どんな体験を結びつけたのだろう。
どんなふうに成長したのだろう。

夏休み明けに作文を読むのは、先生としてはとても大変なのですが、
よく知っている生徒だからこそ、
非常に胸打たれる作品に出会うことがあります。

もちろん「字数・書き出し」の条件はクリアしているとして、
「校内審査」では単にうまく書けている作文ではなく、
「この子だから書けた作文」
を見極めています。

全国コンクールの審査員ではなく、
あなたの国語の先生に届けるよう書いてみましょう。

よく知っている先生です。
あなたの書きたいことは届くと思います。

校内・市区町村審査を通過できない作品は、全国では読まれない

全国コンクールの入賞作品を見ると、
とても上手に書かれているなあと思うでしょう。

でもスタートは「校内審査」です。

難しい言い回しや、きれいに整った文章でも
「本人が書いた、温度のある作品」でなければそこまでです。

だからこそ、
・体験談
・感情の伝え方

・丁寧に自分の言葉で表していく
ことが重要です。

全国コンクールの入賞作品は、
上位審査に進む段階で、先生と一緒に推敲されているかもしれません。
誤字脱字の修正や、先生からのアドバイスを受けての清書など、
途中で推敲されている可能性は高いです。

いきなり完璧に仕上げる必要はありません。

まずは「校内審査」で先生の目に留まることが大切です。
だからこそ、全国を目指す読書感想文は、
まず「校内審査を突破する作文」を目標にして書いていきましょう。

まとめ

読書感想文コンクールは、
校内審査から始まり、段階的に全国コンクールへ進む仕組みになっています

まずは「校内審査」を突破することが重要です。
「字数」「書き出し」を整えて、
「体験談」「感情の動き方」
ふさわしい言葉探し
ながら表現しましょう。

いきなり完成を目指すのではなく、
「本を通してこれまでの自分の体験をどう捉え直したのか」
「本を通してどんな感情の変化があったのか」

丁寧に自分の気持ちと向き合い、
ふさわしい言葉を自分の中から取り出すことに集中しましょう。

なお、都道府県審査以降は、校内・市区町村を通過した優秀な作品が集まります。
「量」ではなく「質」が問われる世界になります。
上位審査会への第一歩として、校内審査を確実に通る作文を書くことが何より重要です。

これから読書感想文に取り組もうとしているみなさん。
1つでも上の審査会に進めるよう、頑張りましょう!

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